「段差解消機」という言葉をご存じですか?
一般の方は、段差解消機という言葉に馴染みがないと思いますが、車椅子の方にとって「段差」は非常に厄介なもので、その段差を超える、なくすために車椅子は進化し、国はバリアフリー法など法律で支援し、街中の段差は少しずつ減少しています。
弊社、株式会社チェーンウェイターは、「誰もが、同じ目線で過ごせる日常生活の実現」をミッションに段差解消機を企画、開発、販売をしています。
そこで段差解消機とはどんなものか、ホームエレベーターと同じじゃないか?というご質問を受けたりするので、基本的なことから、例えばご自宅に導入する際に検討するべきことなどを何回かに分けて解説します。
はじめに
Googleで検索をすると、日本には車椅子を利用して生活している方が200万人いるそうです。
車椅子を利用する理由は、障害を負っているから、高齢で足腰が弱っているからなど様々な理由があります。
実際に調べていくと、この200万人という数字は根拠がいまいち明確でないため、正しいかは分かりません。
様々な情報から弊社も、推定はしておりますが、一つだけ明確なことがあります。
それは、
日本は、世界でも最先端の高齢化社会に“既に”突入している。
そして高齢化すると車椅子を利用者は増える、ということです。
2020年には、12,615万人の人口に対して、3,603万人が65歳以上。
2040年には、65歳以上の人口比率は35%に達すると予測されています。
健康寿命という言葉がありますが、医療の発達や食事の改善など様々な要因で数世代前に比べると若々しい高齢者が増えたことは間違いありません。
一方で、高齢化した時には足腰も弱り、ちょっとした段差でつまづき、転倒し大腿骨骨折。そして寝たきりになるというパターンもあります。
平均寿命は右肩上がりに伸び、平均寿命と健康寿命には男性で10歳、女性で12歳程度の差があります。
健康寿命は世界保健機関(WHO)が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義しており、健康上の問題で日常生活が制限される期間が10年以上あるとも考えられます。
健康でい続けることはとても大事ですが、
段差は、いつか歳をとり、死を迎える我々人間、誰にとってもいずれ脅威となるものなのです。
バリアフリー法によると、車椅子で安全に超えられる段差は2cm。たったの2cmです。
それくらいシビアなものです。
この考え方は、実はベビーカーを利用している方々にも似たようなことが言えます。
2cmとまでは言いませんが、段差があることにより移動に時間がかかったり支障が出ます。
そんな少子高齢化社会が進む日本において、バリアフリー住宅の重要性は今まで以上に高まっています。
特に住宅内の階段は、高齢者や車椅子使用者にとって大きな障壁となるため、安全で快適に移動できる手段の確保が不可欠です。
その解決策として注目されているのが「段差解消機」です。
本コラムでは、バリアフリー化の際、代表的な段差解消機である斜行式段差解消機、鉛直方段差解消機、そしてエレベーターの特徴やメリット・デメリットを比較し、どの選択肢が最適かを検討します。
段差解消機とは?
段差解消機は、階段や段差のある場所に設置し、車椅子使用者や高齢者がスムーズに移動できるようにする機器です。大きく分けて以下の種類があります。
- 斜行式昇降機/段差解消機 階段などの段差に設置し斜めに移動
- 鉛直型段差解消機 エレベーターのように垂直方向に移動
そして段差解消機ではありませんが、同じ昇降機として一般的にお馴染みのエレベーターがあります。
エレベーターも、人が乗るもの、荷物を乗せるもの、不特定多数が乗るものなど、使い方によって法律によって分類されています。
ここでは一般住宅に導入することを前提に、ホームエレベーターを比較対象とします。
- ホームエレベーター
これら3つのそれぞれの特徴や利点、注意点を詳しく見ていきましょう。
斜行式昇降機/段差解消機
特徴
– 階段の傾斜に沿って設置され、レール上を移動するタイプ
– 設置工事が比較的容易
– 比較的低コスト
メリット
・設置が簡単 →既存の階段にレールを取り付けるだけで設置可能
・コストが安価 →エレベーターと比較して低価格
・小規模な住宅でも導入しやすい
デメリット
・利用者を選ぶ →座位を保ち、静止保持ができる必要がある
・車椅子からの移乗が必要 →車椅子から専用座席に乗り換える必要がある
・移動速度が遅い →階段の傾斜に沿って動くため、上り下りに時間がかかる
・安定性が低い →乗り心地に不安を感じる場合がある
斜行式段差解消機
協力:マイクロエレベーター
鉛直型段差解消機
特徴
– 垂直に上下する昇降機タイプ
– 数十センチの小さな段差から、1階から2階への移動まで対応可能
– 一般的な住宅に設置するホームエレベーターに比べると、設置要件が緩和されている。
メリット
・車椅子のまま乗車可能 →斜行式段差解消機のように移乗が不要
・エレベーターに比べると設置要件が緩和されているため大きなカゴも可能 →大きいカゴなら車椅子で回転できる等、車いす使用者の利便性を考慮した使い勝手を実現できる
・数十センチから4mまでの段差に対象 →様々な段差に対応可能エレベーターよりも電力消費や保守コストが抑えられる
デメリット
・設置スペースが必要 →斜行式段差解消機に比べると昇降するための空間、昇降するための吹き抜けを確保しなければならない
・建築工事が必要 →基礎や天井への軽微な工事が必要
・高さ制限がある →法規にて揚程4mまでと定められている。1階から3階への移動などは法的に不可
鉛直型段差解消機
協力:マイクロエレベーター
ホームエレベーター
特徴
– 一般的な建物に設置される昇降機で、数階建ての建物にも対応可能
– 多くのメーカーが提供しており、選択肢が豊富で安心感がある
– 乗り心地や安全性が高い
メリット
・安定した移動が可能 →揺れが少なく、快適な昇降
・車椅子のまま乗り込める →移乗の手間が不要
・不動産価値を高める要因となる →一般の方も利用ができ、建物の利便性や快適性を向上する
デメリット
・設置費用が高額 →エレベーターを固定するための構造、基礎の大規模住宅改修が必要
・維持管理費が高額 →毎年、複数回の定期点検が必要となります。5年から10年に大きな部品交換が必要となる
・法的制約が多い →大規模改修のため、建物の確認申請が必要となる
*完了検査済証がない場合、既存建物の建築基準法適合調査を実施し、現状法規に見合った修繕工事が必要です
・設置に時間がかかる →納期が長い(1〜2年かかる場合も)
・設置スペースの確保が必要 →基礎工事面積が大きく、天井や屋根の改修が必要になる
まとめ
それぞれの段差解消機にはメリット・デメリットがあり、建物の構造や利用者の状況に応じた適切な選択が求められます。例えば、
– 費用を抑えて段差を解消したい→ 斜行式段差解消機
– 車椅子のまま使いたいけど、設置コストは抑えたい→ 鉛直型段差解消機
– 車いすのまま使いたい、1階から2階までの移動でよい→鉛直型段差解消機、ホームエレベーター
– 予算に余裕があり、1階から3階まで移動したい→ ホームエレベーター
特に、バリアフリー住宅の設計においては、段差を完全になくすのではなく「解決する」という視点が重要です。
今後の住宅設計やリフォームの際には、段差解消機の導入を積極的に検討してみてください。
今回は、段差を解消する選択肢にはホームエレベーターと段差解消機があり、その違いとどんな状況に合うかをお伝えしました。
次回は、ホームエレベーターと段差解消機について導入コストや法律的な視点も踏まえて、もう少し詳しく比較してみましょう。