MISSION

” 誰もが、同じ目線で過ごせる日常生活の実現 ”

全人口における身体に障害を有する在宅身体障害の方が 428 万人。 そして、現役世代が支える 65 歳以上の割 合は近い将来 1:1.4 と2人を切ります。 今、車椅子の利用者の数が増加する事が確実でありながら、それを支えるインフラが、足りていない現状があります。

そんな中、日本の世帯数の 60%は持ち家を保有し、その内 76%は、2 階建です。 我々CHAIN WAITER 社は、こ の 2 階スペースの有効利用を可能にし、地域で介護ができるスペースや、ハンディキャップを持つ人が働けるスペ ースを増やしていき、” 誰もが、同じ目線で過ごせる日常生活の実現 ” を提供する事が、我々のミッションです。

菊池製作所+すわ製作所

株式会社 CHAIN WAITER( チェーンウェイター)は、総合金属加工会社「菊池製作所」と建築設計事務所「すわ 製作所」のコラボレーションにより生まれた、ZIP チェーン式昇降装置を手掛けるメーカーです。 私達の技術が、人と人、人と社会を繋ぎ、豊かな社会を生み出す力になることを目指します。

チェーンウエイターZ1 誕生インタビュー

菊池製作所:波場將人    すわ製作所:眞田大輔   

(左)菊池製作所:波場將人 (右)すわ製作所:眞田大輔

「チェーンウェイター」のはじまり

中野:「チェーンウェイターZ1」(車いす専用段差解消機)の販売に向けて、きっかけになったお話を聞かせてください。

波場:一回目の展示会でモノを持ち上げるダムヴェーターを発表したの。で、二回目の展示会の時に車いすの方が来場されて。話を聞いているうちに体が不自由な人向けの段差解消機をつくりたいってなってきたんだよね。

眞田:僕が関わった「障害者支援団体・ゲットインタッチ※」でハンディキャップのある人たちがアクティブに動いているのを目の当たりにして。これはあったほうがいいって、より実感が湧いてきて。若くて障害をもっている人がたくさんいるんだなって。家を建てたあと事故に遭って今2階にいけないんですよ。とか。

中野:実際、車椅子の方に乗ってもらったことはあるんですか?

眞田:もちろんあります。乗ってくれた人から好評なんだよ。

波場:それってね、このチェーンだからできるんだよね。

中野:このチェーンが特別なんですね?

波場:この駆動の方法が世界初なの。特殊なチェーンでカゴを下から突き上げていくっていう。

眞田:普通のエレベーターはカゴがワイヤーで吊られてて。モーターとか重いものが上にある。昇降に必要な重いものが全て下にあるってことが素晴らしいことなの。上に荷重がない。

波場:構造とエレベーターが一体というのがまずすごいことなんだよ。

中野:どういうはじまりでつくりはじめたのでしょう?

眞田:もともと椿本チエイン※のチェーンを使った製品を作っていたんだよね。

波場:そう。大手企業向けの生産ラインとかで製品を昇降させるんだけど、数百万回、365日動くタフな装置で「リフター」といわれている機械。そのリフターの昇降に使われる特殊チェーンがジップチェーンといって、左右からきたチェーンが噛み合わさって強固に棒状になって上がっていくという仕組みなの。その機構が画期的でガイアの夜明けとか、テレビにも出るようになったんだよ。

中野:有名なんですね?

波場:そう。「動くところに椿本あり」って。機械の動く部分には椿本チエイン※製品が入ってる。ほとんどが大手や業界向けの製品で、個人向けや民生需要の製品が少ない。このジップチェーンで何か面白いものが作れるんじゃないかなーって、椿本チエインの春名専務にダメもとで相談してみたんです。そしたら「プレゼンしてみたらって背中を押してくれて。20年来の友人で、建築家の眞田くんに相談したんです。

2018年 第一回施設リノベーションEXPO

まず「つくってみる」菊池製作所の姿勢

中野:最初にダムウエーターをつくろうと思ったのは?

眞田:単純にジップチェ−ンで上がり下がりする機構。建築空間で何ができるだろうって。人間じゃないものを運ぶならいいかなって。さすがに人はね。下から突き上げる方式。はり構造、柱立てて、ってしなくていい。それなら耐震診断とか、なくていける?自立がいけるかな、って。なんとなく。

波場:で、早速つくって2018年の展示会に出してみたらものすごい反響があったんだよね。

眞田:そこで人が乗せられたらって。エレベーターになったらいいのになって。

波場:普段、2トン、3トン。車とかを6、7mも上げる装置をつくっているから人を上げるのもわけなくできるかな。なんとなくホームエレベーターだったら大丈夫かな?って、軽はずみな感じで。笑

眞田:菊池製作所はつくることの敷居が低いんだよね。

波場:工作機械の種類が多いし、色々な業界の部品や装置を作っているからね。ノウハウはたくさんある。

眞田:宮大工とか数寄屋大工とかに近いよね、いっぱいノミとか道具を持っている。「滅多に使わないんだけど、これがあるとおさまりがいいんだよって」何をつくっているってことも大事だけどさ、アイデアを組み上げて、いろいろなパーツをつなげていくっていう。

2019年 第二回施設リノベーションEXPO

製造法規、設置法規?そして大臣認定をとる。

波場:進めていくうちにどうやら、製造法規っていうのと設置法規っていうのがあるらしい、とか。眞田くん、設計しているから設置法規は知っているかな、とか。

眞田:いやいやフワッとだから。

波場:製造法規が不可解だったんだよね。いろいろあたってみたけど分からなかった。でも人を載せたい、という気持ちが先行してきて。

眞田:世の中に車椅子用のエレベーター(車いす段差解消機のこと)っていうのがあるらしい。じゃ、それつくってみようって。
中野:次の年、2019年の展示会にチェーンウェイター(以下CW)2号機目をつくって出してしまった?

波場:そう。そうしたらその展示会もとにかく大盛況でした。そこで認定は大丈夫?って。

認定番号のある製品を使ったことはあるけど認定番号をとったことはない。どこでとるの?って。

眞田:業界の一部の人しか知らない世界。フタを開けてみたけど製造法規と設置法規のことを両方知っている人はいなかったんだよね。

波場:ちょうどその年、水戸市の産業活性化コーディネーターに、大手エレベーターメーカーのOBが就任されてた。菊本さんっていうんだけれど。それでそれまでの謎が一気に解明された。今に至るまで僕たちのエレベーターの先生です。笑

だってね、エレベーター作るって、町工場が勢いで作るには情報が足らなすぎて。法規に合わないから設置できないし、恐くて誰も買えない。それでサイタ工業さんっていうエレベーター専門の会社を紹介してもらって。椿本チエインと「車いす専用段差解消機」を突っ込んでやりましょうって。そこからはステップを少しずつ上げていく感じで。

眞田:法規が見えてきたところで、エレベーターは型式認定を取らなければならないので、認定をしてくれる所に行ってみようと。

波場:でもジップチェーン自体が告示にないから型式認定が取れない。まず駆動方式で国土交通大臣認定をとってくださいってことになって。一般的には専門メーカーが数社で協力して申請したりする内容だったんだけれど。それを中小企業が単独でとるのは珍しいし、何より難しい。

中野:そうなんですね?どんな感じで進んでいったのでしょう?

波場:先ず、最新技術を50年以上前の法律の解釈に当てはめて論理的に説明するのが難しかったよね。だって、主索や鎖は上から吊るという前提なのに、下から突き上げるという動きになるんだもん。国土交通省まで説明に行った時は、初めての霞が関でドキドキした。笑

次に、産業界で100万回耐久と保証されていても、どの様な理論で、どうして大丈夫なの?根拠は?とか、全てを法規に合わせて書面で提出する。この辺が、人を乗せるエレベーターと物を運ぶリフターとの違いかな?2018年の時点で、今回提出したレポートの量と難易度を見たら心が折れていたかも。笑

眞田:そんな苦労の大臣認定も、認定機関の性能評価を貰って最終審査(国交省の認定待ち)にきたね。ようやく。

波場:試作・実験・レポートの繰り返し。駆動方式の認定だけでも3年近くかかってるね

2021年 第四回施設リノベーションEXPO

製作現場にて

中野:そうなんですね、一号機をつくりはじめたのが2017年、なんかここまでとても早い感じがしますが。

波場:いやいや、あれだけの設備をフルに使って、全力で走って、休みの日も常に考え続けて、やっと今ここまでだから。普通の開発環境なら部品一つ一つが外注になる。注文して到着を待って、駄目なら作り直しっていうようなね。それを僕らは自分たちの工場で直ぐに製作できる。何回もね。そういう環境の中で5年の間、毎日毎日攻め続けた。片手間じゃなくて、緩みなくみっちり。

中野:その情熱はどこから発されているのでしょう?

波場:うちは三代60年以上工場やっていて、やっぱりお客様であるメーカーさんあっての商売で。頂いた図面以上のものを安く速く、さらに良いものを作らせて貰う。そうやって家族同様にスタッフ達と皆で寝る間も惜しんでやってきたの。それはそれで尊い事なんだけれど、一製造屋として、長年培った技術や、最新の設備を惜しみなく出し切れるもの作りがしたいって。それなら日常業務やりながらでも、キツクても頑張れるって。追われる毎日だったんだけど逆にスタッフ皆が燃えてくれてね。最近は自分達のブランド意識?お揃いのCHAINWAITERのTシャツを着て現場に立ってる。笑

眞田:こういう工場の仕事って。コストだけの競争に日々終わっちゃうんだよね。もっと自分達の考え、意志のあるものづくりをしたいって思っていてもね。

技術を組み合わせて人の役に立てる「昇降機」をつくる

波場:工業って世の中の役に立っているのかな、って思っちゃうことがあって。公害を撒き散らして無駄をつくっているだけじゃないかって。部品も、何処の何をつくっているか分からない。本来、ものつくるって楽しいはず。で、やっぱり人の役に立っているって実感できるものづくりをしたいよね。

眞田:建築雑誌に取材されて本を送ったりするとみんな喜んでくれるんだよね。こんなふうにできたんだーって。工場でつくってる人も誰のための何の役に立っているのかっていう実体感。モチベーションがね。大切だよね。

中野:それが忍耐強くCWに取り組むことにつながっていくんですね。CWをつくっていくことによって変わってきたことはあります?

波場:社内でCWが進むのと同時に自分達の技術やアイデアが企画となり商品になるんだって実感が湧きました。時間がかかるけれど、信念を持ってやり続ければ形になるって。みんなにも思ってもらえるようになったんじゃないかな。

●CWの目指すところ「これから」

中野:日々刷新していっている様子ですが苦労したのはどの辺でしょうか

波場:音の問題とチェーン特有の乗り心地の部分。人間っていう感性のあるものを運ぶとなると途端に難しくなるんだよね。その部分にかなりの時間をかけた。

乗った時の安定性だったり、音だったり、それから工事面積≒乗り場面積だったり。このシステムで多くの人に喜んでもらえると思う。

眞田:まずは困っている人たちに広めていってギャップのない世界を実現したいよね。

海外でも困っている人たちがいるし。たくさんの人が助かる。

波場:今はそういう人たちに早く乗ってもらいたい。そのために頑張っているという状況です。

聞き手:中野清香 すわ製作所
 
一般社団法人 Get in Touch
 

椿本チェイン

 
サイタ工業